Psychedelics

ブッフォとは?


ブッフォ(Bufo)とは、英語でヒキガエル科のカエルの事を言います。しかし、サイケデリックスの話をする場合、ブッフォはコロラド・リバー・ヒキガエル【学名: (旧)Bufo Alvarius (現)Incilus Alvarius】の事を指します。スペイン語ではサポ(Sapo)と言います。

アヤワスカを知っていたり経験したことのある人は、日本でも多少はいるかと思います。しかし、ブッフォは世界的にも殆ど知られていない強力な幻覚剤です。その強さは、ネット上で『アヤワスカの10倍強い』とも言われる程です(真偽は別として)

今回の記事では、ブッフォについて詳しく解説していこうと思います。

◆コロラド・リバー・ヒキガエルとは?

▲コロラド・リバー

コロラド・リバー・ヒキガエルは、アメリカ南部のアリゾナ州〜メキシコ北部のソノラ州にかけて生息する希少なヒキガエルです。英語では、Sonoran Desert Toad若しくはColorado River Toadと言います。

コロラド・リバー・ヒキガエルは、全長100mm~最大190mmにまで成長する米国最大のヒキガエルです(外来種のオオヒキガエルを除いた場合)

体色は基本的にオリーブ色ですが、個体によって茶色など、若干異なる色をしています。他のヒキガエルと比較するとイボ状突起が目立たない皮膚を持っているのと、口の横に大きな白いイボがあるのが特徴です。目の横や脚には大きな膨らみがあり、それらが毒腺となっています。

コロラド・リバー・ヒキガエルは砂漠や草原などに生息し、昼間は穴に潜って眠り、夜に活動を開始します。

9月から4月までのほとんどの期間は地中で冬眠しますが、7月~8月の雨季になると、雌と雄が水場に集まり繁殖行動を行います。メスは約8000個の小さな卵をゼリー質で包まれた紐状にして産みます。幼生(オタマジャクシ)は全長約5cmまで成長したのち変態します。

コロラド・リバー・ヒキガエルは昆虫、爬虫類や両生類、小型の哺乳類など様々な生物を捕食します。鳴き声は低い小さな音で短いようです。寿命は約20年に達します。

研究者は、コロラド・リバー・ヒキガエルは乱獲が原因で個体数崩壊の危機に瀕していると警告しています。

◆コロラド・リバー・ヒキガエルの毒

▲コロラド・リバー・ヒキガエルの毒

コロラド・リバー・ヒキガエルは、危険を感じると、目の横や脚にある毒腺から毒を分泌します。この毒には5-HO-DMT(ブフォテニン)や、5-MeO-DMT(5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン)を含む十数種類のトリプタミン化合物、アルカロイドが含まれており、これをヒトが摂取すると幻覚作用などを引き起こします。一方、犬や猫が摂取した場合は死亡する場合があるようです。

5-MeO-DMTはコロラド・リバー・ヒキガエルの毒の乾燥重量全体の約15~30%の濃度で存在します。5-MeO-DMTは、乾燥させたカエルの毒1gあたり約150~300mg存在するとされており、植物由来の5-MeO-DMTと比べるとはるかに高い濃度が確認されています。コロラド・リバー・ヒキガエル1匹で最大75mgのこの物質が生成される様です。

コロラド・リバー・ヒキガエルの特殊性は、その毒が既知のヒキガエルの中で唯一5-MeO-DMTを含んでいることです。これは、このヒキガエルがO-メチルトランスフェラーゼという特殊な酵素を持っており、ブフォテニンを5-MeO-DMTに変換するためです。

また、コロラド・リバー・ヒキガエルは他の多くのヒキガエルと同様、ブフォテニンを乾燥皮膚1gあたり約3mg生産しています。また、その皮膚には、ブフォビドリンという他の亜硫酸物質や、ブフォゲニン、ブフォトキシンという心臓毒性物質も含まれています。因みにブフォテニンやブフォトキシンはニホンヒキガエルの毒にも含まれます。

◆5-MeO-DMTとは?

▲5-MeO-DMTの化学構造式

5-MeO-DMTは、天然に存在するトリプタミン系のアルカロイドで、O-メチルブフォテニンとも呼ばれます。

5-MeO-DMTはDMT(N,N-Dimethyltryptamine/ ジメチルトリプタミン)のメトキシル化誘導体です。一般的なサイケデリックの多くは、主にセロトニン5-HT2A受容体のアゴニストによって心理的作用を引き起こすと考えられていますが、5-MeO-DMTは5-HT2Aよりも5-HT1Aに対して1000倍の親和性を示します。

5-MeO-DMTは1936年に初めて合成され、1959年にはヨポというアナデナンテラ・ペレグリナの種子から単離されました。

▲ヨポと呼ばれるアナデナンテラ・ペレグリナの種子

5-MeO-DMTはコロラド・リバー・ヒキガエル以外のカエルの毒には含まれていませんが、以下のようないくつかの植物はこれを含んでいます

Diplopterys cabrerana(ディプロプテリス・カブレラナ)

Diplopterys cabrerana(ディプロプテリス・カブレラナ)は、南米(ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー)アマゾン原産のつる植物で、ケチュア語でChaliponga(チャリポンガ)若しくはChagropanga(チャクロパンガ)と呼ばれています。

N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)や5-MeO-DMT、ブフォテニン、N-メチルテトラヒドロ-β-カルボリンなどのアルカロイドを葉や茎にを豊富に含有します(葉のサンプルからは、0.17-1.75%のN,N-DMTを含むことが判明しています)

5-MeO-DMTは、人間の尿、血液、脳脊髄液などの体液中からも検出されており、人体でも合成可能な物質と考えられています。

▲合成された5-MeO-DMT

また、5-MeO-DMTは、人工的に合成が可能です。

◆5-MeO-DMTの作用

●身体面

視覚的、聴覚的、知覚的な幻覚を引き起こします。しかし個人的な感想としては、チャンガ(DMT)と比較すると視覚的な幻覚は得難いかと思います。その他にも臨死や幽体離脱などを体験する可能性があります。

5-MeO-DMTは、地球上で最も精神作用の強い物質であり、DMTの5~10倍強力とも言われています。

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsomega.0c05099

●精神面

知覚の変化や思考の多様化、悟りの感覚などが得られます。また、神秘的体験、エゴや自我の消失を経験する人もいます。5-MeO-DMTを経験すると、『生まれ変わった』と語る人が多い様です。

※大きな個人差があります。

●医療面

5-MeO-DMTはDMTやその他のサイケデリックスと同じく、不安やうつ病、PTSD、ストレス、薬物依存症などの治療に利用可能だと考えられています。そして、研究ではこれらの効果は長期的に続くと示唆されています。しかし、研究が十分に進んでいないため、更なる研究が必要とされています。

また、この物質には強力なバイオペプチドが含まれており、それが体内のオピエート受容体と相互作用して鎮痛作用が得られる様です。

◆5-MeO-DMTの副作用

5-MeO-DMTにはいくつかの副作用があり、中には重症化する人もいる事から、誰もが安易なノリで摂取するべきではありません。特に心臓に疾患のある方や統合失調症、精神病などを患っている方は避けるべきでしょう。また、他の薬を使用している人は、飲み合わせに関して非常に注意しなければなりません。

副作用の例として、以下の様なものがあります。

●吐き気/嘔吐/下痢

●パラノイア

●長期的な幻覚作用の持続、フラッシュバック

●血圧の上昇

●目眩

●瞳孔散大

●食欲減退

●発汗

◆5-MeO-DMTの効果持続時間

効果は、カエルの毒を吸引してから数秒で発生し、通常約5~30分間続きます。しかし、人によっては数時間余韻が残る場合があります。

また、気腹や静脈注射の場合はより長く効果が続く様です。

◆5-MeO-DMTの用量

気化吸引の場合の5-MeO-DMTの用量は以下の通りです。

平均的な投与量: 5 – 10mg
高用量:10~20mg

5-MeO-DMTの中毒性

5-MeO-DMTの使用者を対象とした調査では、一般的に「使用頻度は低く、主に精神的な探求のために使用されている」「中毒の可能性は低い」と結論づけられています。

経験者の82%が5-MeO-DMTを精神的または癒し/心理的な目的で使用したと回答しており、一般的に娯楽として使用される物質ではないことが示されています。

さらに、経験者の大多数は1年に1回以下しか使用せず、使用の大部分は儀式的なものと回答している。したがって、強迫的な再投与や中毒的な行動パターンは基本的に見られない様です。

◆ブフォテニンとは?

ブフォテニンの化学構造式

ブフォテニンは、5-MeO-DMTのO-脱メチル化代謝物です(肝臓でCYP2D6によりO-脱メチル化)

ブフォテニンはヒキガエルの皮膚から単離され、第一次世界大戦中にプラハ大学のオーストリアの化学者ハンドフスキーによって命名されました。ブフォテニンの構造は1934年にミュンヘンのハインリッヒ・ウィーラントの研究室で確認され、ブフォテニンの最初の合成は1935年に日本の星野敏夫と下平健也によって報告されました。

ブフォテニンは、中国で何世紀にもわたって薬用に使用されてきた様です。

前述した通り、ブフォテニンはヒキガエル科のカエル(特にコロラド・リバー・ヒキガエルの毒に多く含まれる)や、Osteocephalus taurinus、Osteocephalus oophagus、Osteocephalus langsdorfiiの皮膚分泌物や、ヨポと呼ばれるアナデナンテラ・ペレグリナの種子などの一部の植物にも含まれています。

▲Osteocephalus taurinus

因みに、バナナの皮にブフォテニンが含まれるという都市伝説がありますが、それは全くの嘘である様です。

◆ブフォテニンの効果

2001年に民族植物学者のジョナサン・オットが、気腹(5-100 mg)、舌下(50 mg)、直腸内(30 mg)、経口(100 mg)、気化(2-8 mg)で遊離基ブフォテニンを自己投与した研究結果を発表しました。オットはブフォテニン経鼻投与での幻覚作用を報告し、このルートでの幻覚閾量は40 mgで、より少量で知覚できる精神活性効果を誘発したとのことです。彼は、ブフォテニン鼻腔内投与は、全体的に非常に身体的にリラックスできたと報告しました。

100mgでは、効果は5分以内に始まり、35-40分でピークに達し、90分まで持続しました。より高用量では、幾何学模様などが見える幻覚作用が得られました。舌下投与された遊離基ブフォテニンは、鼻腔内投与と同じであることが判明しています。オットは、気化した遊離塩基性ブフォテニンが2~8mgで活性を示し、8mgでは目を閉じた状態で幾何学模様が生じることを見出しました。彼は、気腹されたブフォテニンの視覚効果は1人の同僚によって、気化されたブフォテニンの視覚効果は数人のボランティアによって検証されたことを指摘しました。

◆ブフォテニンの致死量

▲ニホンヒキガエル

齧歯類におけるブフォテニンの急性毒性は200~300mg/kgと推定されており、呼吸停止により死亡します。

ヒトでは、2017年4月に韓国の男性が食用のアジアウシガエルと間違えてヒキガエルを食べた後、ブフォテニン中毒で死亡しました。2019年12月には台湾の男性5人がカエルと間違えて中央台湾のヒキガエルを食べて発病、男性1人が死亡しています。

◆ヒトによるブフォテニンの生成

1960年代後半に行われた研究で、統合失調症の被験者の尿からブフォテニンが検出されたことが報告されました。また、別の研究では、乳児自閉症患者のような他の精神疾患を持つ個人の尿検体から内因性ブフォテニンが検出されました。 さらに、妄想的暴力犯罪者または家族に対して暴力行為を行った者は、他の暴力犯罪者よりも尿中のブフォテニンレベルが高いことが示されました。

2010年の研究では、重度の自閉症スペクトラム障害(ASD)、統合失調症、および無症状の被験者の尿中のブフォテニンのレベルを検出するために質量分析アプローチを利用した結果、ASDと統合失調症グループの尿中のブフォテニンのレベルが無症状の個人と比較して有意に高いことが示されました。

コロラド・リバー・ヒキガエルの毒の摂取方法

▲パイプで毒を炙るシャーマンと、発生した煙を吸引する女性

基本的には採取したカエルの毒を乾燥させ、パイプで炙り吸引します。その他にも気腹や経皮、静脈内投与、筋肉内注射がありますがあまり一般的ではありません。

シロシビンやLSDとは異なり、5-MeO-DMTやDMTなどのトリプタミンは、モノアミン酸化酵素による急速な第一通過代謝を受けるため、経口活性はありません(アヤワスカの様にMAOIを同時摂取すれば活性しますが、危険性が高く、幻覚性アミン中毒による死亡事例もあります)

基本的に5-MeO-DMTは個人で使用するものではなく、アヤワスカやチャンガと同じようにシャーマンによる儀式の元で経験します。

◆シャーマンによる儀式

▲儀式を受けるGRAY

シャーマンによるブッフォの儀式は、基本的にメキシコを中心に北米や南米で行われています。儀式を受けるにあたり、準備や注意する点がいくつかあるので解説していきます。

●儀式の予約

儀式を受ける場合はオンラインで予約をするか、コネクションを使ってシャーマンを手配する必要があります。日本人にわかりやすく言うと、海外版LINEのような『WhatsApp』というチャットアプリでやりとりをする場合が多いので、インストールしておきましょう。また、やりとりはスペイン語若しくは英語になります。

●健康状態

体調が悪い場合、儀式を受けるのは避けた方が無難です。統合失調症患者や心臓の弱い方は特に危険が伴います。鬱病、病みやすい方、精神的に弱い方も後遺症を患う可能性があるので注意しましょう。

抗うつ剤、その他の薬を服用している方も飲み合わせに注意が必要です。

●食事制限やドラッグの制限

肉類、加工食品などは、儀式前の数日間と儀式後の数日間は摂取しない様に言われる場合があります。これが霊的な理由なのか科学的な理由なのかは不明です。

幻覚剤は空腹時に摂取した方が効果を最大限発揮させることが可能だと考えられています。儀式当日は断食若しくは野菜及び果物中心の食事がオススメです。人によっては数日前から断食(ファスティング)をしたり、ケトーシスダイエットを行う場合もあります(身体がケトーシスの段階にあるとき、幻覚剤の効果が高まると言われています。) 

肉類や加工食品と同様に、儀式前の数日間と儀式後の数日間はドラッグを摂取しない様に言われる場合があります。大麻は問題ありませんが、アルコールやカフェイン、コカイン、アンフェタミンなどのドラッグは控えておきましょう。特に当日はそれらを摂取しない様にして下さい

日常的に服用している薬がある場合は、医師に確認するのがベターです。特に抗うつ剤などを使用している場合は、儀式は避けた方が良い可能性があります。

また、それらに加えて性行為を制限するよう言われる場合もあります。

●儀式当日

当日は、シャーマンに言われた集合場所に行きます。危険なので、貴重品などは持って行かない様にしましょう。カットフルーツやチョコレートを持っていくと良いでしょう。

●儀式直前

初めてブッフォの儀式を受ける人は、強い恐怖や緊張を感じる可能性があります。その場合は瞑想をして心を落ち着かせ、シャーマンの話を聞き、シャーマンとカエルの毒を信用・信頼するようにしましょう。それが、良いDMTトリップを得るために重要な鍵となります。

●儀式中

シャーマンは、ガラスのパイプにヒキガエルの毒を用意します。息を十分に吐き出した後、煙を限界まで吸い込みます。煙は約10秒間肺に留めます。効果はすぐに現れるので、地面に仰向けになりましょう(仰向けが最も良いトリップをするのに適した体制だと個人的に思います)

効果が非常に強力なため、LSDやマジックマッシュルームなどの経験がある人でも、強い不安を感じる場合があります。ブッフォは臨死体験をしやすいので、『死ぬのではないか?』と感じる可能性があるからです。その様な状況でも、シャーマンとカエルの毒を信用・信頼し続けましょう。

シャーマンは通常複数人おり、彼らが歌を歌って太鼓やマラカスを鳴らしたり、煙を体に吹きかけたりします。その歌に集中することが大切だと個人的に思います。

効果は通常30分以内に切れ、儀式は終了します。

●儀式後

他の幻覚剤と同様、体験は人それぞれです。ただそれをトリップするためだけのドラッグとして受け取るのか、そこから何かを得て人生に活かすかは、その人次第です。

◆ブッフォの法的地位

コロラド・リバー・ヒキガエルは、規制対象種リストに含まれていません。また、5-MeO-DMTとブフォテニンのいずれも、1971年の向精神薬に関する国連条約の向精神薬リストには含まれていません。つまり、別途法律で定められている国を除き、ほとんどの国で規制対象物質にはなっていません。

●アメリカ

コロラド・リバー・ヒキガエルの所持は規制されていません。しかし、5-MeO-DMTとブフォテニンはスケジュールIに分類される物質であり、アメリカでは所持することが違法とされています。

●メキシコ

合法です。

●日本

コロラド・リバー・ヒキガエル自体は規制されておりませんが、5-MeO-DMTは違法とされています。ブフォテニンは規制はされていません。

◆ブッフォの歴史

人類学者のピーター・ファーストによると、人類はネアンデルタール時代からヒキガエルの毒を利用していたと言われています。しかし、1970年代まで人類がコロラド・リバー・ヒキガエルの毒を吸った具体的な証拠はない様です。

また、古代メソアメリカの壁画にはヒキガエルと思われるものが描かれている事から、数千年前からブッフォは使用されてきたのではないかと推測されています。

現在では、多くの人がブッフォによる神秘体験を求めてメキシコい儀式を受けにくる様です。

◆ブッフォとマイク・タイソン

▲史上最強のボクサーとも言われるマイク・タイソン

史上最強のボクサーとも言われるマイク・タイソン(Mike Tyson)は、2019年にJoe Rogan Experienceのポッドキャストにて、ブッフォの体験について話しました。彼は、それをキッカケとして、人生や人々を違った目で見るようになったと述べています。ブッフォは彼の集中力を高め、減量やボクシングの再開、モチベーションを高めるのに役立ったそうです。

マイク・タイソンは、マイアミで開催されたサイケデリックに関する会議で、これまで53回ヒキガエルの毒でトリップしたと語りました。しかし、最初の “トリップ “の体験に匹敵するものはなかったそうです。タイソンはニューヨーク・ポスト紙で、「私は最初のトリップで死んだ。その後の私は今までの私ではない」と述べました。

◆最後に

ブッフォは非常に強力ですが、GRAY個人的には、LSDやアヤワスカ、チャンガとは異なる素晴らしい体験ができたと思っています。